〒134-0088 東京都江戸川区西葛西7-12-7 森山脳神経センター病院 /〒134-0081 東京都江戸川区北葛西4-3-1 森山記念病院
Ⅿoriyama-neurological-center-hospital, ,7-12-7 Edogawaku-nishikasai,Tokyo/Moriyama Memorial Hospital, 4-3-1 Kita-Kansai, Edogawa-ku, Tokyo
十周年記念講演会抄録
|
間脳下垂体外科は平成17年4月に、脳神経外科のなかで主に間脳下垂体疾患の外科的治療を中心に診療を行う科として従来の脳神経外科より分離、新設された科で、診療科としては本邦でも最初の設立であった。(今年は創立10周年にあたる)。我々が目指して来たものは日本の下垂体疾患の卓越した拠点病院となることで、いわゆるPituitary Center of Excellence (Neurosurgery 71:916-24, 2012)を目指して今日まで診療、活動を行なって来たが、Pituitary Center of Excellenceとして要求される条件は1) 最適・最高の医療の提供が行なえること。2)内外の医師の訓練・教育を行なっていること。3)下垂体疾患の研究への貢献が行なわれること等が挙げられる。1)最適・最高の医療の提供が行なえること。このことは外科施設として最も力を入れてきた点で、この間、常に医療の質の向上に向けた努力を行なってきた。そして機能性下垂体腺腫の手術成績の向上と合併症の軽減には、細胞レベルでの全摘が可能な様な被膜外切除、術中迅速病理診断によるstep by step の残存腫瘍のないことの細胞レベルでの確認を心がけ、また手術成績に最も悪影響をあたえる腫瘍の海綿静脈洞への浸潤に対しても2003年以降それまでno man’s area とされて来た、海綿静脈洞浸潤腫瘍にも積極的に外科切除を挑んで来た。そしてこれらの操作が安全に行なえる様に術中ナビゲーション、マイクロドプラー、眼球運動モニターなどの術中モニターの使用を常設化して来た。また巨大下垂体腺腫や鞍上部に主座し、従来は開頭術しか切除方法がなかった頭蓋咽頭腫などの下垂体近傍の頭蓋内腫瘍に対し、安全で低侵襲的な外科切除法の確立(拡大経鼻手術、開頭、経鼻同時手術)とその臨床の現場での汎用化に努めて来た。それらの結果年間の外科手術例数は近年350例前後で推移している。また他院からの再手術の紹介患者数が15%を占めており、当科は多くの下垂体疾患の患者さんにとって最後の砦となっていることが推測出来る。これらの疾患をより多角的に治療が行なえることは、内分泌内科、小児科、脳神経外科、血管外科、病理学科、耳鼻科、眼科などの適切な協力体制によることは論を俟たない。2)内外の医師の訓練・教育を行なっていること。当院の研修医・レジデントへの教育はもちろん、他施設からの手術見学者、受託研修医も積極的に受け入れて来た。また年4回関東近辺の施設を中心に虎の門下垂体症例検討会を開催し、問題となるケースについて討論を行ない、互いの知識の向上に務めている。また昨年より次代を担う若手脳神経外科医、内分泌内科医を対象に虎の門下垂体セミナーを開催。初日は教育講演を行い、2日目には脳外科医師を対象に東京医大解剖学教室のご理解、ご協力のもと、献体を使用し、手術解剖の理解を目的としたcadaver dissection course を行なっている。同様の献体を利用してのworkshopを、韓国のYonsey大学脳神経外科との共同で、主にアジアの発展途上国の若手脳外科医を対象に行なって来た。そして毎年、当院から講師を出している。その他、患者さんへの正しい情報の提供を目的に2005年、国立京都病院の島津章先生とともに下垂体患者の会(下垂会)を立ち上げ、現在に至っている。会はその後患者さん自身で運営され、発展をとげ、会の大きな働きかけで2008年10月に下垂体7疾患が新たに特定疾患として認定された。3)下垂体疾患の研究への貢献が行なわれること。関係各科の医師は互いに協力し合いながら研究を行ない、学会での発表や英文論文の投稿を行なって来た。ただし基礎的研究については当院のみで終始できるものではなく、従って国内外の研究機関と共同で種々の基礎的研究課題に取り組んでいる。 以上我々が目指して来た、本邦において立派なPituitary Center of Excellenceにすこしでも近づける様にこれまでに当院で行なって来た活動について紹介すると同時に、今後の課題、将来像についても言及する予定である。 |