〒134-0088 東京都江戸川区西葛西7-12-7 森山脳神経センター病院 /〒134-0081 東京都江戸川区北葛西4-3-1 森山記念病院
Ⅿoriyama-neurological-center-hospital, ,7-12-7 Edogawaku-nishikasai,Tokyo/Moriyama Memorial Hospital, 4-3-1 Kita-Kansai, Edogawa-ku, Tokyo
下垂体は小さな器官ですが2つの異なる部分(組織)からなっています。それぞれ前葉(ぜんよう)後葉(こうよう)と呼ばれています。また下垂体を脳とつなげる茎を下垂体柄を呼び、茎は視床下部と呼ばれる脳の部分へと連絡しています(図1)そしてこの下垂体は、色々なホルモンを産生する重要な内分泌器官です。The pituitary gland is an important gland and it is often referred to as the ‘master gland’, because it controls several of the other hormone glands. It is usually about the size of a pea and is situated in a bony hollow beneath the base of the brain and just behind the bridge of your nose. The gland consists of two parts (It’s called lobes) each of which has different functions.これら産生分泌されるホルモンは ◆ GH 成長を促す成長ホルモン |
図1下垂体とは脳底部からサクランボの様に茎でぶら下がって(下垂して)いる小豆大の小さな器官です。そして頭蓋底のトルコ鞍と呼ばれるくぼみに埋まっています。(図1) |
下垂体腫瘍について山田正三の解説下垂体腫瘍とは下垂体腺腫とも呼ばれる良性の脳腫瘍の一つです。この腫瘍は“下垂体について”のところで説明した下垂体の前葉から生じます(前葉の細胞が突然変位しどんどん増えている状態です)。現在どうして突然変位が起こるのか(なぜ下垂体腫瘍ができるのか)は分っていません。よく下垂体腫瘍は“食事との関係はあるのですか? 疲労が原因ですか? 遺伝するのですか? 癌ですか?”と言う質問を患者さんや御家族から受けますが、食事や疲労が原因ではなく、また一般的には遺伝病でも、癌でもありません。但し放置すると色々な症状を出し、場合によっては生命にかかわります。下垂体腫瘍の本邦での年間発生率は約 1500 人前後と類推されています。 |
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下垂体腺腫は腺腫から過剰な下垂体ホルモンが産生され、その過剰ホルモンによる特異的な症状を呈するホルモン産生下垂体腫瘍とホルモンの過剰産生を伴わないホルモン非産生腫瘍に大別されます。 ◆ 成長ホルモン産生下垂体腫瘍成長ホルモンが腫瘍から過剰に産生・分泌される結果、巨人症や先端巨大症と言われる症状を示します。 ◆ プロラクチン産生下垂体腫瘍プロラクチンが腫瘍から過剰に産生・分泌される結果、女性では月経異常(無月経、不妊)や乳汁漏出(妊娠していないのに乳汁が出る)が、男性ではインポテンツや女性化乳房(女性のような乳房)が生じます。 ◆ クッシング病 (ACTH産生下垂体腫瘍)ACTHが腫瘍から過剰に産生・分泌される結果、副腎が強く刺激され副腎のホルモンが過剰産生されます。その結果肥満や骨粗鬆症(骨が脆くなりすぐ骨折する)易感染性(すぐに感染症になりやすくまた治りにくい)となり最終的には死にいたる重大な病気です(クッシング病)。 ◆ その他TSH 産生下垂体腫瘍(甲状腺機能亢進をともないます。)や性腺刺激ホルモン(LH/FSH)産生腫瘍(多房性卵巣脳腫や思春期早発症を呈します)があります。TSH 産生腫瘍は最近ホルモンがより正確に測定できる様になりその頻度が増加しています(それでも下垂体腫瘍の3%)。それに対し LH/FSH 産生腫瘍は極めて稀です(自験例5000例中10例程度)。 ◆ ホルモン非産生腫瘍これに対しホルモンを産生しない下垂体腫瘍は全体の 25〜30%を占め、大切な器官を圧迫する結果生じる症状が主体となります。 腫瘍が大きいことにより周囲の組織(下垂体や視神経)を圧迫することで生じる症状です。これには本来自分を産んでくれた正常下垂体が、腫瘍で圧迫されるため生じる下垂体ホルモンの分泌低下(下垂体機能低下症といいます)と下垂体の近くにある神経(物を見る視神経、眼を動かす神経など)が腫瘍で圧迫されるために生じる症状や頭痛が主なものです。視野異常の代表的な症状は両耳側半盲と言って両視野の外側が見えにくくなります。ホルモン非産生腫瘍では、種々の占拠性症候が唯一の症状となりますが、ホルモン産生腫瘍でも腫瘍が大きいとホルモン過剰による症状以外に占拠性症候も合併します。 下垂体腺腫以外にはどんな疾患が下垂体やその近傍には生じるのでしょうか この円グラフは山田正三が2005年以降2021年末までに手術を施行した下垂体近傍疾患の内訳を示したものです。下垂体腫瘍が最も多く82%ついで頭蓋咽頭腫が7%、ラトケ嚢胞が5%で、残りの6%がグラフ右上に記載されている様な種々の疾患群です。 森山脳神経センター病院下垂体腫瘍 専門医 山田正三 |