〒134-0088 東京都江戸川区西葛西7-12-7 森山脳神経センター病院 /〒134-0081 東京都江戸川区北葛西4-3-1 森山記念病院
Ⅿoriyama-neurological-center-hospital, ,7-12-7 Edogawaku-nishikasai,Tokyo/Moriyama Memorial Hospital, 4-3-1 Kita-Kansai, Edogawa-ku, Tokyo
本疾患は腫瘍ではないものの、実際の下垂体疾患の外科治療の中では下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫についで多い疾患です(図参照)。また他院から下垂体病変があると言って紹介される患者さんの中で占める割合の多い疾患です。
ラトケ嚢胞(RCC)は原始口腔外胚葉に由来するとされる下垂体の良性嚢胞性病変です。その多くは下垂体部の偶発病変(頭部外傷、めまいなど他の原因で頭部MRI検査を行い偶然発見される下垂体部疾患の総称)として発見されることが多く、その場合通常は嚢胞も小さく、いろいろ検査しても占拠性症候(視野異常、下垂体機能低下症)などもなく、経過観察で良い疾患です。ただし稀ですが、視野異常や下垂体機能低下症などを主訴とし、いわゆる症候性のラトケ嚢胞として発見される場合があります。ラトケ嚢胞が大きく、非機能性下垂体腺腫の様に視機能障害、下垂体機能障害を呈している場合には手術の必要があります。またこの疾患では時に日常生活が困難な激しい頭痛を訴える方がおられます。この様な頭痛が長期間続く様な場合、顕著な生活の質(QoL)の低下を招き、このような場合にも手術の適応症例となります。
手術は経鼻的に施行し、嚢胞の開放術を行いますが、15%程度で嚢胞の再貯留が起こります。その場合に問題になるのは頭蓋咽頭腫との移行型です。いずれにしても再貯留が生じた場合には、また同じ嚢胞開放術では再、再発を呈する可能性が高く、拡大経鼻法にて鞍上部を解放し、出来るだけ嚢胞壁を切除する手術が必要となります。山田正三
下記写真は ラトケ嚢胞被膜、内溶物(水様性、粘稠な膿様、チーズ状など種々の内容部があります。嚢胞開放、内容物排液、最後に再貯留を防ぐ目的で嚢胞開放部分を蝶形骨洞粘膜で覆う(coupling法)
14歳女児、激しい頭痛が続き、就学が困難で来院。ラトケ嚢胞と診断、嚢胞を開放し、頭痛は完全に消失し、就学、学校生活が可能となりました。