〒134-0088 東京都江戸川区西葛西7-12-7 森山脳神経センター病院 /〒134-0081 東京都江戸川区北葛西4-3-1 森山記念病院
Ⅿoriyama-neurological-center-hospital, ,7-12-7 Edogawaku-nishikasai,Tokyo/Moriyama Memorial Hospital, 4-3-1 Kita-Kansai, Edogawa-ku, Tokyo
下垂体腫瘍、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、セカンドオピニオンの相談も随時受け付けております。脳神経外科医 山田正三
下垂体腫瘍セカンドオピニオン |
A.セカンドオピニオンは、「医者をかえる」為ではなく、主治医にしっかりと見ていただきながら、 医師と良好な関係を保ちつつ、他の医師の意見を聞いてみることです。医療は常に進歩しており、さまざまな治療法があり、場合によっては治療方針等に差異がある場合もあります。患者さんにとって最善の治療を、患者と主治医で判断するために、あえて主治医以外の医師の意見を聞いてみる。そしてその結果が医師、患者両方にその後の治療を行うあるいは受ける際のメリットになれば理想的です。それが現在国の医療制度のなかで認められているセカンドオピニオンの理念です。従って主治医の気分を害する等の危惧をされずに医療行為に疑問を抱いた場合にはまず主治医の意見を再度十分に確かめ、それでもご納得がいかない場合には主治医にご遠慮なくセカンドオピニオンをご依頼ください。むしろ黙って医師を変えることのほうが患者、医師双方にとって有害です(前の結果等を利用出来ず一から同じ検査をやり直さなければならない場合も出て来ます)。もちろん、セカンドオピニオンの結果、再度熟慮され、その後の手術など治療する医師がかわること(転院)もあるかもしれませんが、本来は病院をかえたり主治医をかえることがセカンドオピニオンの主目的ではなく、患者さんご自身が病気に関してしっかりと確認、納得されながら治療にとりくんでいただくための一つの制度であり、このことを十分にご理解いただきご利用されると良いでしょう。
開頭術(頭を開ける手術)について
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Q.今の主治医から開頭術(頭を開けて腫瘍をとる)と言われたが、鼻から出来ないか?
A.現在、下垂体腺腫やその他下垂体近傍に生じる病変の手術は経鼻的方法でほとんどの症例は治療が可能です。従って開頭術を施することは通常ありませんので、もし開頭術を勧められたならば、下垂体の外科を専門とする医師の意見をセカンドオピニオンとして聞いてみるべきでしょう。下垂体腫瘍の手術には、頭を開ける方法(開頭法)と鼻からアプローチする方法(経鼻法)があります。現在ではより低侵襲的(身体により優しい)な経鼻法が一般的となっています。ちなみに山田正三の最近10年間の下垂体腫瘍の2000症例の手術症例で開頭術のみを行った症例は一例もありません。大きなもので経鼻手術のみでの切除が困難な症例は現在開頭術と経鼻同時手術(下垂体腫瘍の手術の項目をご参照下さい)を施行しています。
下垂体腫瘍 手術後の後遺症とはどのようなものか?
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鼻腔内を経由して下垂体に至るので、鼻腔内の粘膜の損傷、炎症、などが生じます。結果鼻閉館、鼻出血、嗅覚の低下などが一過性に生じます。従って術後の鼻うがい、お近くの耳鼻科でのフォローなどが、必要となります。多くは2、3ヶ月で問題が無くなります。
術後入院期間内に見つかり、場合によっては髄液漏修復術が入院中に必要になることがありますが、合併頻度は0.1%です。ただし拡大法などの大きな手術の術後はその頻度が増加します(1%前後)
下垂体機能については多くは(60~70%)術前と変わず、20%前後で術前より改善します。しかし10%前後で術後より悪化することがあります。 ただしその多くも一過性ですが、極めて稀に長期にわたり機能低下が続く方がおられます。 ただし最悪の場合でもお薬(ホルモン補充療法)を内服していただければ、普通の日常生活が送れます。
下垂体腫瘍 各疾患ついて
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A.色々な治療法がなされているようです。この腫瘍の治療の原則は腫瘍の大きさを問わず、第一選択の治療法は薬物療法です。これがグローバルスタンダードです。手術は、薬が色々工夫しても副作用(嘔気、ふらつきなど)でどうしても有効必要量飲めない方、いくら飲んでも効果(プロラクチンが正常以下にならない、あるいは腫瘍が小さくならない)が不十分な方(全体の3-5%程度)のみに必要となります。これがプロラクチン産生腺腫治療方針の原則です。ただし近年考え方がまた多少変わってきました。たとえお薬が有効でも、薬剤を長期に渡り内服する必要性のある若年者(通常30歳以下)では、手術で極めて高い確率(100%に近い)で腫瘍の全摘出が可能な症例では、患者さんに十分に選択肢をご説明した上で、患者さんが手術をご希望になられた場合、手術を第一選択肢として選択する傾向が強くなってきています。ただし腫瘍が浸潤性で、手術を行っても手術だけで完全に治癒に持ち込むのが困難で、術後にお薬の内服の必要性が高い患者さんでは、患者さんがたとえ手術を選択したとしても、私はその適応がないことをご説明して手術は原則行っていません。(もちろん最初に述べたように、薬剤抵抗性、あるいは副作用で飲めないなどの理由で手術が必要な方は別ですが)
A.確かに副作用で薬が飲めないのであれば手術を考えなければなりません。しかしこの場合よく見かけるのが間違った薬の内服方法です。すなわち、はじめから一錠から開始されたら多くの患者さんは気分不快などで飲めないことがよくあります。この場合、場合によって2分の1錠、就寝前から始めるなりの工夫をしつつ少しずつ増量すれば大抵1週間に1~2錠(カバサール)程度は飲めるようになります。従って薬物治療も経験豊かな専門医(内分泌内科医、あるいは外科医)に行ってもらうべきでしょう。
A.一部ではまだ手術を初回治療として行う場合が例外的にあります。それは前述したように、年齢が若く、腫瘍が比較的小さく(1cm前後),まわりへ浸潤しておらず、手術で治癒が高い確率で望める場合で、かつ患者さんが以上のような情報を十分に知った上で薬物より手術を希望される方です。この場合も実際の手術は下垂体外科を専門とする、あるいは経験豊かな医師に行ってもらうべきで、最悪、単に治らないばかりか正常の下垂体機能まで失ってしまう可能性があり何のための治療か分からなくなってしまいます。やはり下垂体の外科を専門とする医師の意見をセカンドオピニオンとして聞いてみるべきでしょう。
A.少なくとも女性では閉経までは飲むべきです。なぜならば休薬するとまた元に戻ってしまうからです。しかし稀に休薬後にそのまま治癒する症例や、妊娠分娩を契機に自然治癒する症例が数%ですがあります。また近年の研究では内服でPRLの値が、低値を3年以上維持できた場合に内服を中止しても約20%~40%程度でPRLの再上昇を見ないと言われています。従っていったん維持量が決まれば通常半年に一度程度採血しプロラクチンの値を計って行けばいいでしょう。また手術を受けた場合もこの腫瘍は他の下垂体腺腫とことなり再発しやすく、従ってやはり半年~1年に一度は採血しプロラクチンが上がってこないか診ていく必要があります。
A.基本的には妊娠が分かった時点で薬を止めるのを原則とし、その場合授乳期間が終わり再度プロラクチンを測定し、まだ高ければ病気は治っていないと判断し薬を再開します。またこの薬剤が特に奇形を誘発するとの報告は今のところありませんので妊娠する事やした場合、子供に奇形が出来るのではとの心配は不要です。
GH産生腺腫(先端巨大症)
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A.この病気も早期発見、早期治療が大切です。まず内分泌内科、下垂体専門の脳神経外科医を受診して下さい。よく血中GHの値だけで心配される方がおられますが、GHは身体の条件で変動します。従って、診断確定のためには、その他の検査、IGF-1(ソマトメジンC)の血中の値や糖を飲んでGHがどの程度抑制されるかなどの検査が確定診断のために必要です。
A.この病気は最も予後が不良な下垂体疾患の一つです。昔治療法が乏しかった時代の無治療の患者さんの5年生存率(病気の診断後、5年後の生存率)は50%程度と言われていました。これはまさに現在の胃がんの5年生存率と同様で、癌でもないクッシング病という病気の重大性がよく理解していただけるかと思います。またこの病気は外科手術が第一選択肢ですが、再発も多い疾患です。従ってクッシング病の腫瘍の外科的摘出は絶対に下垂体専門の外科医に委ねるのが最も安心です。
この病気も早期発見、早期治療が大切です。まず内分泌内科、下垂体専門の脳神経外科医を受診して下さい。よく血中GHの値だけで心配される方がおられますが、GHは身体の条件で変動します。従って、診断確定のためには、その他の検査、IGF-1(ソマトメジンC)の血中の値や糖を飲んでGHがどの程度抑制されるかなどの検査が確定診断のために必要です。
A.海綿静脈洞浸潤腫瘍は最も治療の困難な腫瘍です。主治医から誰が手術をしても治癒できないといわれた場合。同じならどこで手術を受けても変わらないと思わないでください。確かに完治は誰が行っても海綿静脈洞全体を占拠するような腫瘍では困難です。しかしこれらの腫瘍を50%しか切除しないのも95%切除するのも完全に摘出できないという点では同じです。ただし予後が大きく異なります。その理由は術後に必要となる薬物療法や放射線療法の効果は術後のホルモン値や、術後の残存腫瘍の量(ボリュウム)に比例し、ホルモン値が低ければ低いほど、容積が小さければ小さいほど良く効きます。従って完治できなくともできるだけ術後のホルモン値が低くなるような、あるい残存腫瘍の容積が少なくなるような手術を行ってもらうことが極めて重要になります。従ってこのような状態であると主治医の先生からいわれたら“どうせどこで手術をしても同じなんだ”と思わないで積極的にセカンドオピニオンを求めてみて下さい.。
ホルモン非産生腺腫について |
A.近年他の理由(頭痛の精査や脳ドックなど)で検査され偶然に下垂体部分に腫瘍が見つかる事があります。これは偶発下垂体腫瘍と呼び、その治療法が問題となります。まず下垂体腺腫か他の腫瘍かの鑑別、下垂体腺腫であるならホルモンを産生している腫瘍かホルモンを産生していない腫瘍かを鑑別する必要があります。各々により治療方針が異なってきます。このなかで、このような場合に最も頻度が高いのがホルモン非産生下垂体腺腫です。これについては原則直径が1cm以内の小さな物については手術の必要はありません。1年に1度MRIで経過観察していけば良いでしょう。そして大きくなってくれば治療対象になります。1cm以上であれば、明らかな異常(視野異常や下垂体機能低下症など)が無い場合でも、視神経に腫瘍が接しているよう場合(大抵直径で1.5-2cm)には年齢が65歳以下である場合ならば、一応手術をおすすめしています。
ラトケ嚢胞 |
Q.ラトケ嚢胞についておしえてください。
A.ラトケ嚢胞も偶然見つかり、我々専門医に紹介されてくる疾患の中で多くを占める疾患です。病気の概念、治療法などについてはこのホームページのラトケ嚢胞のページをご覧ください。
その他の質問 |
A.いずれの方法でも後に美容上問題となるような顔貌の変化や傷が残ることはまずありませんが、山田正三の下垂体腫瘍の手術、5000例を超える症例で、残念ながら、術後に鞍鼻となり、形成外科手術を受けられた方が、5名ほどおられます。
A.下垂体腫瘍の手術後で退院後に最も問題となるのは鼻腔内合併症です。多くの方で術後、嗅覚や味覚が戻らない、鼻閉感が強い、鼻声になった、鼻に血が混じるなどを訴える方がいらっしゃいます。そんなわけで現在は退院後にお近くの耳鼻科にご紹介状をお書きして診てもらうようにご説明しています。もちろん多くの方は一過性で3ヶ月程度で症状が回復してきますが、ごく稀に嗅覚障害が強く残られる方がおられます。
A.経鼻手術後に鼻をかんだときに血が混じる、痰や唾液に血が混じることは1〜2ヶ月程度は続くことがありますが、通常は問題ありません。徐々に日を追ってなくなっていきます。ただし大量の出血を呈することが稀にあります(最近の800例の手術例では4例)。これは一旦止血されていた動脈に偽性動脈瘤が形成されたり、血栓が融解したりして術後2週間〜2ヶ月ぐらいの間に大量に動脈性出血をきたすこことなり、この場合には緊急の処置が必要となります。緊急で近くの耳鼻科に行かれるか、手術した施設への緊急搬送が必要となります。従って我々の施設では遠方の方は退院後必ずお住まいの近くの耳鼻科をご紹介し、そのような場合でもご対応していただけるようにしています。
A.通常はありません。ただし大きな下垂体腫瘍で拡大経鼻法にて手術を行ったような症例で2例ほど(5000例中)内頸動脈、中大脳動脈の内膜剥離、それに続く脳梗塞が生じた症例があります。また術後に鞍上部(トルコ鞍の上方の頭蓋内)に出血し、血腫が形成されると、ときに1〜2週間後に血管の攣縮とそれによる脳梗塞が生じることが極めて稀にあります(自験例でも6/5000例)。
A.通常は視機能については95%の方は大なり小なり術前より改善します。大なり小なりというのは半数程度の方は、長期に視機能の低下があり、既に視神経が萎縮しているために完全には元に戻らない、あるいは回復により時間がかかります。従って、視機能が悪化している症例では出来るだけ早期に視神経への圧迫を解除(手術)することが重要となるわけです。従って手術が遅れ、視神経の萎縮が完成し、両方とも重度の視機能障害が長期に及んだ例では最終的に視神経の減圧(腫瘍の切除)を行っても視機能が改善しないことになるわけです。また腫瘍の形状が不規則で、視神経と癒着が強い場合など、極めて稀に術後むしろ視機能が悪化する(数百例に1例)場合があります。
A.術後に下垂体機能が低下することは腫瘍の大きさによっては(大きく硬い)ありうることです。大きな非機能性下垂体腺腫の手術を例にとると、術前の機能障害と比較し、大きく術後変わらないという症例が、60%、術後悪化する症例が20%、改善する症例が20%と報告されています。機能障害から、手術までの期間が短いほど、術後の下垂体機能の改善率は上昇しますので、この点からも早期の原因除去の手術が必要と言えます。また術後の下垂体機能については明らかに我々下垂体専門家が手術を行う方が、一般の脳外科医が行うより機能予後は良いことが明らかになっています。
A.基本ありませんが、術中に髄液が漏れ、修復が必要であった症例などでは創が癒るまで(術後1〜2ヶ月)は極端な脳圧が上がるような行為や動作(トイレで力む、頭部を下にするような操作、極端に重いものをもつ)は避けた方が賢明です。また退院後、耳鼻科で鼻の状態を診ていただくことも重要です。同時に鼻洗浄も最低でも1〜2ヶ月は続けられた方が良いでしょう。もちろん、飛行機など乗り物に基本制限はありません。
以上ご質問の多かった事項についてお答えしました。もちろんこれは原則を述べたもので個々の症例でその治療方針は多少異なります。これらと関連したご質問でも不明な点がございましたら主治医の先生や小生にお尋ね下さい。このホームページを通して、下垂体疾患で困っておられる方に少しでもお役に立てば幸いです。