我が子を抱く日も夢ではないかもしれません

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◆我が子を抱く日も夢ではないかもしれません◆

森山記念病院で2018年X月X日に手術していただいたSです。
山田先生、善本先生ご無沙汰しております。この度は本当にありがとうございました。
私は長年、両側卵巣肥大があり地元の病院では、卵巣嚢腫や多嚢胞卵巣と
診断されておりました。20XX年に左卵巣茎捻転で緊急手術しました。
左卵巣を摘出してからはホルモン薬（ピル）を飲みながら毎日を過ごして
おりました。
また、ホルモンのACTHが低かったこともあり、MRIをとったところ
非機能性の脳下垂体腫瘍があるが悪さをしないものなので様子
を見ていこうということでした。

2018年X月に結婚し、妊娠希望のためピルの服用を辞めた途端、
下腹部の痛みがあり産婦人科を受診したところ、
右卵巣に卵子が9個できていて18センチに肥大していました。
エストラジオール値が1600あることから、私の下垂体腺腫がホルモンを
作り出しているのではないかということでした。
穿刺してとっても卵子ができ続け捻転する可能性があることを伝えられ、
子どもが大好きな私は妊娠ができなくなる恐怖と悲しみと不安でいっぱいでした。
治療方は手術しかないということだったので、家に帰ってからネットで
調べるとこの手術は執刀医の経験の差によって合併症の頻度がかわると
書かれていました。受けなければ卵巣の痛みは治らず、妊娠をのぞむことは
できない。手術をしたら合併症や後遺症が残るかもしれない。

藁にもすがる思いで調べ続けると、山田先生のホームページにたどり着き、相談のメールに今までの経緯を全てをまとめ送信しました。
山田先生からは2日たって返信をいただきました。今振り返れば、多忙な先生が私のメールを読み返信する時間がどこにあるのだろうかと思っています。
山田先生は「これは極めて稀な腫瘍だけど、臨床症状があるならとってみよう。大丈夫だよ」と笑顔がとても印象的でした。
卵巣がに、手術の際にもMRIの画像と腫瘍の範囲が違っていたようですが、経験の多い山田先生は病理検査にまわして正常な下垂体をきちんと残してくださったと家族から聞き、先生と出会えたご縁に本当に感謝しました。その後も内分泌の三木先生と小野先生に丁寧に検査していただき退院することができました。そして、婦人科にいき卵巣が正常の大きさに戻ったことがわかり心から安心しました。

いつか我が子を抱く日も夢ではないかもしれません。その際には先生にもご報告できればと思います。助けてくださり本当にありがとうございました。

長くなってしまいましたが、先生方のご健康とご多幸を心よりお祈りしております。そして私のように、下垂体腺腫で苦しむ多くの方が先生と出会い救われることを願っています。

2018年11月Ｓ様より

山田正三：この患者さんは機能性ゴナドトロピン産生腺腫という
極めて珍しい下垂体腫瘍でした。私も４０００例近い下垂体腫瘍の
手術をしてきましたが、これが原因で卵巣に多房性卵巣嚢腫
（腫瘍からFSHが過剰産生・分泌され、卵胞が過剰に刺激される
結果）ができる同じような症例は他に６例しか経験していません。
多くはきちんと手術で下垂体腫瘍を切除すると、症状が劇的によくなるのも
本症例の特徴です。しかしこのように稀な疾患であるだけに、婦人科の先生が
この病気のことを少しでもご存知で、原因がわからない卵巣の囊胞の場合
この疾患も鑑別に挙げて、適切な鑑別のための検査（下垂体のMRIなど）を
行なっていただかない限り、発見されません。従ってSさんの場合も、
もちろんきちんと切除できたこともさることながら、地元の婦人科の先生に 
この病気を疑って検査していただき、早期に見つけてもらったことが
このような良い結果につながったのだと思います。我々も引き続き婦人科の
先生方に稀な疾患だけにこの病気の啓蒙を続けていきたいと思っています。